「(仮称)とよなか大学院」開設にむけた公開研究会<第2回>
テーマ:ひとり親家庭と地域の支援
講 師:佐々木妙月さん (情報の輪サービス株式会社)
日 時:2016年9月8日(木) 19:00~20:30
場 所:中央公民館
1、佐々木さんからの話題提供
研究会の前半は佐々木妙月さんからお話をうかがいました。
佐々木さんは、ご自身が転職する際に苦労した経験から就労の苦労を共有できる会社を設立(32年前)し、転職カフェやレストラン事業などをされてきました。10年前、庄内・労働会館での仕事に関わったことを機に訪れる若者たちの居場所の必要性を感じたとのこと。現在は豊中市内で10事業を展開中です。
○女性の就労支援としてカフェ、レストランをオープン
1984年、就労・転職の悩みを共有しともに考えられる場として「情報の輪サービス」を設立。1990年代前半のバブル崩壊で紹介できる就職先が減少し、それを機に「就労支援」とともに「働く場所作り」へと展開。大阪市本町にレストランをオープンし、女性の働く場所を自分たちで作ってきました。
2011年、シングルマザーがともに作り働く場として庄内に「銀座食堂」をオープン(現ジ・メルカート)。その後、さらに2店舗(ギャラリーカフェぐるり、ごはんやぐぅ)をオープンし、シングルマザーだけでなく、様々な立場の人が就労のためのステップとして考えられるような中間就労の場となっています。
○学習支援を通して自信をつけるプログラムづくり
就労支援の過程では、単に働く場所を提供するのでなく、学びを通して次のステージへステップアップできる仕組みを作ってきました。豊中市「ひとり親家庭の就労支援のための研修プログラム」では、「コミュニケーション研修」としてエンパワメント研修、自己肯定感、自尊感情の回復、アサーショントレーニングなどを導入。「学習支援」(読み書き・計算)や接客、販売、店舗経営に関する研修なども行ってきました。また資格・技能取得のための研修として、パソコン、医療事務、調理師などの資格取得のための学習支援なども行ってきました。
シングルマザーのほとんどがパート従事で、生活のためにダブルワーク、トリプルワークをする人も少なくありません。就労支援の研修プログラム設定によって、2010~2016年の間に調理師資格を44人が取得し、7割が正社員となりました。履歴書に取得資格を記載できるようになり、自信を持てるようになったと考えられます。プログラムを通して自己肯定ができるようになり、互いが認め合う関係を築くことができるようになりました。
○地域とつながるお店づくりへ
庄内は、物価も安く人情もあり、独立しやすく、会社も興しやすいと感じています。地域(商店街)の中に店舗(銀座食堂)があることで地域に溶け込むきっかけとなり、地域と繋がり、人間関係を作っていくことができています。若者中心で街を歩き、店主インタビューも掲載した庄内のマップを制作。人との繋がりを作るきっかけになりました。
「銀座商店街」は、以前に比べ店舗も増えました。庄内バルを通して、自分の店のことだけでなく横のつながりを意識できるようになりました。地域のイベントへの参加が、人との出会い、助け合い、情報交換ができるきっかけとなっています。
6年前にできた「若者居場所工房ぐーてん」は、労働会館にやってきた若者たちの居場所づくりがベースになっています。今年からは「ぐーてん子ども食堂」としてオープン。今夏には30人ほどが集まりました。
○寄せられた意見
「地域の課題解決をしたいという場合、どんな人材が必要だと思いますか?」との質問に、佐々木さんからは「支援をしてあげるということではなく、面白がって取り組める人がいい」とのコメントがありました。
その他、下記のような感想やコメントが寄せられました。
「前回の庄内ガダバの話とも共通していて、生活を通しての人の温かさを感じる。地域やみんなで課題を解決できればと思った」
「若い人だけでなく、高齢の人も何かしたいと考えているので、活用してほしい」
「子どもが幼いときにシングルマザーになった。子どもをしっかり育てたい気持ちはあるが、一人なので自信をもてなかった。大切なのは学力よりも、子どもがどれだけの人に関わってきたか、どれだけの大人に愛情をもらえたかということ。一人親家庭の場合、そのチャンスが限られていることが多い」
「ニーズがあるところへ向けて活動されている点に感銘を受けた」
2、「(仮称)とよなか大学院」カリキュラムについて
研究会の後半は「(仮称)とよなか大学院」のカリキュラムについての意見交換。以下のような意見が出されました。
「佐々木さんの『面白がる人がほしい』というコメントが印象的。『おもしろい』というのはキーポイントだと思う。すべてのプログラムの根底に流れていたらいいと思った」
「カリキュラムの中身はバランスが取れていると思う。回数が多いのでそれなりに覚悟のある人がくると想定され、それは良いのではないか」
「未来は明るいものということであってほしいので、建設的に学ぶ人に来てほしい」
また、カリキュラム案で土曜日午後の日程が多くなっていることに対して、週末に仕事がある人は参加できないので、集中講義などが設定できないかとのご意見が出されました。これに対して講師の佐々木さんからは、転職カフェを開講する際に平日夜と土曜日午後の両方で開催したところ、開講日によって違ったニーズをもった方が参加され、それぞれに意義があったとのコメントがありました。以上のような意見を踏まえ、開講曜日をどうするかについて事務局で持ち帰って検討することを確認しました。