2016/10/6 公開研究会<第4回> 若年者の自立・就業サポート

「(仮称)とよなか大学院」開設にむけた公開研究会<第4回>

テーマ:若年者の自立・就業サポート
講 師:白砂明子さん/(一社)キャリアブリッジ
日 時:2016年10月6日((木) 19:00~20:30
場 所:青年の家いぶき

1、白砂さんからの話題提供

講師の白砂さんは、若者支援の現場に約15年にわたってたずさわってこられました。現在は、若者の自立・就職支援などを行う「キャリアブジッジ」で勤務されています。

○就労困難な状況が社会的孤立や貧困ともつながっている

大阪府は「高校不登校」「中退」とも全国ワースト。高校を中退すると10代のうちに学校というセーフティネットから外れてしまい、社会漂流するリスクがあります。いま大きな影響を受けているのは超就職氷河期に就職活動をした40代前半ぐらいの人たち。以降、ニートと呼ばれる若者が激増しています。
非正規社員の割合は、20年前は20%弱。この20年で雇用編成も大きく変わり、2015年には34.7%に達しています。不安定雇用は、自分の将来に対して希望が持てるかどうか、キャリアが前向きに描けるかどうかにリンクします。自分が納得して選択した道かどうかは、本人の自己肯定感に関わります。
若者問題は新たなステージに入っていると考えられます。就労困難者の中には、成人期以前の問題(家族の問題、いじめ、不登校、貧困など)を抱えている人が少なくありません。こうした課題は社会的孤立・貧困にも繋がっているのです。

○包括的な若者支援のために ~キャリアブリッジでの取り組み

自治体・公共機関と連携しながら民間の強みを生かし、包括的に若者の支援に取り組んでいます。

◆くらし再建パーソナルサポートセンター
今の活動のベースになっている活動で2011年から始まりました。本事業の対象者は、生活保護に至るリスクがあるけれども、支援を通して自立が見込まれる方。複雑で重複した阻害要因を有する相談に対応するため、多様な経歴を持つスタッフでチームを組んでいます。

◆定時制高校内 居場所&相談室事業
10代の若者の大変さを実感する中から始まりました。現在の定時制高校は、小中高で引きこもり・不登校を経験していたり、障害を持っていたり、家族が厳しい状況にあるなど困難な課題を抱える子どもたちが集中していて、貴重なセーフティネットになっています。学校を中退してしまうとセーフティネットからはずれるリスクがあることから、学校と連携して校内で居場所を作り、安定就労につなげることを目指しています。

◆とよなか若者サポートステーション(厚生労働省委託事業)
就職支援に特化した事業で、本人のニーズや適正を判断し、自分にあった働き方をサポートするというものです。高学歴の利用者が多く(6割が大卒)、引きこもり経験(3割)や、不登校の経験(2割)を持った人も少なくありません。メンタル面や対人関係の課題を抱える人が多く(2人に1人)、自己肯定感が低い、他者との信頼関係が築けない(社会生活の基盤がつくれない)といった特徴もあります。

◆合宿訓練(ユースチャレンジキャンプ)
就職活動の中では人間関係の問題を抱えることが多いことから、対人関係や自己肯定感にアプローチするプログラムを実施しています。合宿訓練(ユースチャレンジキャンプ)はそのひとつ。野外活動は目に見える成果を体感できることから、自己肯定感につながる経験をすることができます。また、引きこもりや不登校などのために遠足や修学旅行、キャンプなどに行ったことがないという人はめずらしくありません。キャンプファイヤーをしたり、みんなで一緒にお風呂に入ったりすることで、青春の取り戻しや、仲間づくりを経験できるなどの効果もあります。
その他、「若者支援相談窓口・学習支援事業」(豊中市教育委員会委託事業)や、ゆるやかな居場所、信頼できる人とのつながりを実感できる場所づくり(自主事業)などの活動も行っています。

○「多様で個性ある働き方・暮らし方」を目指して

経営上の課題としては、委託事業の場合は単年度事業となるため財政が不安定に陥りやすいということ、単年度契約のために人材の継続的な確保が困難であることなどがあげられます。
この間の活動で感じることは、社会的な支援が整備されつつある中で、表面に見える課題に終始するには限界があるということです。今後の取り組みとしては、次のようなことが必要なのではないかと感じています。
まずは支援の価値観を変えたいと思っています。自分たち自身が支援対象者との対等性を確保したり、相談者の自立支援や主体性の成長につながる仕組みをつくりたいと考えています。
次に、地域・社会に貢献し、かつ持続可能な事業を創造するということです。目指しているのは「持続可能な地域社会をつくる」こと。すべての若者や女性の、自由で個性的な働き方や生き方が認められる社会をつくるためには、その方たちが暮らす地域・社会に貢献することは不可欠です。
さらに、「多様で個性ある働き方・暮らし方」は自社文化、スタッフ自身がそれを実現する必要があります。自分たちが多様で個性ある働き方をすることで、社会に対してそのような文化をつくっていきたいと考えています。

○感想・意見など

「何人就職したかなど数値で評価されることに対することについてギャップを感じることはないか」との質問に対して白砂さんからは、「ギャップはあるが、目的ではなく財源を確保するための手段であると捉えている。想いをもった人材をどう育成するのか、何を目指すのかというミッションがブレなければいいと考えている」との答えがありました。また「うまくいかないケースの方が多い。とにかく諦めずに継続的にやり続けること、エンパワメントを続けていくが大切」といったコメントもありました。
その他、次のような意見が寄せられました。

  • 支援の価値観を変える必要性があるということ、多様で個性のある暮らし方のできる社会をつくるのであれば、自分たちでやっていこうということなどに感銘を受けた。
  • 対等という言葉があったが、それは大事だと思う。何かを教えるとかでなく、来て一緒にそこにいる人と何かをやる、つくることをする中で何かを得られればいいと感じた。
  • 学校に入っている居場所が魅力的だと思う。私たちは専門家ではないので、どんなサポートをこういう活動をする方にできるのか考えたい。一緒にやらないとダメだと感じた。
  • 以前にキャリアブリッジでのセミナーに参加した際、年齢の高い方が十数名、誰も話をしなかったり笑わない中で、受講を促しているスタッフの姿を見ると「対等性」よりも「支援」だと思った。来ている相談者も助けてほしいと来ている。活動の中で「対等性」は大事と思いながら、キャリアブリッジではそれだけの言葉で片付けられない関係性の中にあると感じた。
  • キャリアブリッジの支援はプロの支援だと思う。支援することを、もっと意識していいと思った。

2、「(仮称)とよなか大学院」開設プレ事業について

来年度の開講にむけて今年度に実施する「プレ事業」についての検討を行いました。「ワークショップ編」(2017年1月頃)と「企画づくり編」(2月頃)を実施予定で、「(仮称)とよなか大学院」の宣伝を兼ねて行います。日程は開設記念事業の兼ねあいで最終決定することを確認し、内容もおおむね了承されました。