「(仮称)とよなか大学院」開設にむけた公開研究会<第5回>
テーマ:地域で見守る高齢者・子育てサポート
講 師:下田ひとみさん/(株)あたらすファミリー
日 時:2016年10月20日((木) 19:00~20:30
場 所:とよなか起業・チャレンジセンター
1、下田さんからの話題提供
講師の下田さんは、大阪生まれの宮古島育ち。あたらすファミリーの「あたらす」は宮古島の言葉で、「かけがえのない、大切な」という意味です。2012年に蛍池(とよなか起業・チャレンジセンター内)にて創業しました。
○制度をこえた家族支援をしたい ~あたらすファミリーの取り組み~
下田さんは、ケアマネージャーとして高齢者支援に携わると同時に、働く母として子育て世帯が抱える課題に向き合ってきました。特に子育てと介護は縦割り行政のもとでは相談窓口が分かれていることから「制度をこえた家族支援のしくみが必要」との思いにかられるようになります。
そこで、家族が遠方にいても、高齢者や子育て世代を地域で支えることができるサポート体制をつくってきました。具体的には、ケアマネージャーがケアプランの作成をする居宅介護支援事業、介護保険の対象ではない高齢者の生活支援、子育て生活支援、認可外施設型保育、認可外居宅型保育、ゆい支援など、トータルな形での家族サービスを行っています。
○サポート事例
◆ 独居高齢者(男性、91歳、要支援2)の場合
長男・長女ともに遠方に居住。本人は日常劇な家事を希望しており、家族は定期的な訪問と話し相手を希望されています。介護保険では45分/回の家事支援を3回行うのが限度ですが、2時間/回の家事サポートを週3回実施することにしました。
◆ 高齢者の入院、通院のサポート
入院中は医療保険の対象になるため、介護保険のサービスは利用できません。必要なサポートは家族がするか、自費でサービスを利用するしかありません。総合病院への通院は予約をしても半日以上待つことも多いです。そこで、入退院を繰り返す高齢者の方の入退院時のサポートや、転院の際の介助、通院サポートなど、必要に応じて対応しています。
◆ 片づけや庭そうじのサポート
いま最も多くの依頼を受けているサポートです。介護保険の認定を受けていても、いわゆる「ゴミ屋敷」のような状態では支援がスタートしません。そのためのサポートを行ったり、定期的な庭そうじ(介護保険対象外)や部屋の片づけなども行っています。
◆ 保育所等との併用サポート
普段から保育所を利用していますが、それだけでは解決できないことが多くあります。習い事の送迎、仕事で遅くなる場合の迎えとその後のシッター、発熱などの際の対応など行っています。また、第2子、第3子出産時の上のお子さまへの保育送迎なども行っています。
○誰かといっしょに食べることは楽しい ~あたDECO食堂(ゆい支援)~
単身生活をおくる若年性認知症の利用者さんを担当したことから始まった活動。「孤食・個食をなくしたい」「認知症があっても、子育て中でもみんなで集まれる場所をつくりたい」との思いで、月に1回、さまざまな世代が集まって一緒に食事をしています。あたらすファミリーの保育ルーム(とよなか起業・チャレンジセンター内)で第1回目を開催した際、近くの飲食店(DECO)の方が参加されたことから、2回目からはDECOの定休日を利用して実施することになりました。
現在のスタッフは、要介護4の認知症の男性、要支援を受けている方、介護認定を受けていない方、包括支援センターの職員さん、地域の看護師さん、DECOの経営者、当たらすファミリースタッフなど。例えば、認知症男性のお連れ合いさんなどにとっても、参加される子育て中の若い方とのふれあいの中でゆったりとした時間を過ごすことができています。
これからも、独居、認知症、子育て中などそれぞれの環境、世代を問わず「誰もが集まって会話ができる場所」をつくっていくことを目指していきたいと考えています。
○地域の中での仲間をさがしながら
表面化している課題(例えばゴミがたまっているなど)ではなく、「なぜその課題が表面化しているのか」に着目するようにしています。そのための聞き取り(アセスメント)は重要です。社会福祉士や保育士など資格を持ったスタッフにも、その専門分野だけではなく「家族支援をしている」と言っています。相談者は「困った人」ではなく「困っている人」。自分がサポートしたい方法ではなく、相手がどうサポートしたいのかを考えられる人を求めています。
安心して介護も子育てもできて住みやすい地域になるためには、「家族支援」の仕組みが必要です。そのための「サポートできる仲間」を増やしていきたいと考えています。
○感想・意見など
Q:スタッフは足りているのか?
A:スタッフはずっと募集している。決まった仕事がない。マニュアルはあるがパターン化できない。家族の在り方がちがうように、仕事のマニュアル化ができない。遠方では彩都までサポートに行くこともあるが、小さなエリアで仲間を作っていきたいと考えている。
Q:介護保険外の仕事をすることに戸惑いはなかったか?
A:「やらなあかん」という気持ちでスタートした。この仕組みを早く作る必要があると思っていた。ケアマネージャーの経験があったので、ケアプラン作成の件数があがれば数字はあがるという見通しはたっていた。
Q:以前に福祉事務所で勤めた経験はどのように活かされているのか?
A:福祉事務所では介護業務の適正化業務をしていた。ケアプランのチェックをしていたが、その中でいろんなタイプのケアマネージャーがいると思った。出会ってよかったと思われるケアマネージャーになろうと思った。
Q:社会福祉協議会や他のサービス提供者との違いや関係は?
A: 社協やファミリーサポート、シルバー人材との違いについては、「似たようなものでお金がかかるもの」と言っている。助けてほしい人の中には、お金がある方もいれば、なくて困っている方もいる。「ボランティアじゃないの?」と聞かれることもある。私は事業としてやっていきたいし、福祉でも食べて行けるようにしたい。ただし相談を受けた場合は、しっかり聞き取りをして、何らかの形で課題を解決するように心がけている。介護業界が魅力ある業界になってほしい。ボランティアや安価でサービスを提供しているところもあるので、すみわけていく必要があると思っている。
その他、子育ても介護もトータルに「家族の問題」として相談にのってもらえるサービスのあり方に感銘する感想が多く寄せられました。
2、「(仮称)とよなか大学院」開設記念事業について
来年2月の実施を目指して、講師候補者と調整を行っていることを報告しました。