第1回(基礎編①) 開校式、オリエンテーション
テーマ:開校式、オリエンテーション
進 行:森本誠一さん(大阪大学産学共創本部特任研究員)、とよなかESDネットワークの皆さん
日時:2017年5月13日(土)14:00~17:10
場所:とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ セミナー室1
5月13日(土)、とよなか男女共同参画推進センターすてっぷにて、第1回とよなか地域創生塾(以下、「創生塾」という。)を開催し、総勢24名(欠席1名)の塾生たちが初めて顔を合わせました。
◯市長挨拶〜アイスブレイク
始めに、主催者代表として豊中市の淺利市長からあいさつがありました。創生塾に対する思いと、塾生への期待感が伝わって、塾生だけでなく運営スタッフ側にもまた改めて気合が入りました。
そして、いよいよ第1回創生塾がスタートです。
まずは上村有里さん(とよなかESDネットワーク)とともにアイスブレイクを行いました。
会場中央に大きな円になって、今日の気分や創生塾への今の意気込みをみんなで共有します。改めてお互いの顔を見合わせる中で、老若男女、やる気満々で元気一杯の人もいれば、まだまだ緊張が抜けない人もいたり、本当に様々な人が参加していることに気づかされます。
その後は、言葉を使わずに誕生日順に並んでいくバースデーチェーンなどのワークを行い、徐々に参加者との距離も近づいていきました。ここでは早速、言葉を使わずにコミュニケーションすることの難しさや、言葉を使わないコミュニケーションのあり方など、これからの創生塾でも鍵となっていくような学びのポイントがありました。
◯自己紹介とみんなで守るルール作り
次に、5人1組のグループに分かれて、自己紹介とともに創生塾で共有したいルールについて話し合います。
自由な雰囲気の中で、各グループからは「子供に戻る」や「積極的に発言する」、「イマジネーションを活発に」といった意見から、「相手を否定しない・尊重する」、「人の話をよく聞く(聴く)」、「受講の時は眠らずシャキッとする」、「秘密を守る」といった意見まで、様々なルールが共有されました。
ここで出たルールは次回以降も守っていきます。
※塾生で作成した「共有したい学びのルール」(PDFファイル)
◯それぞれの持つ「活発さ」の違いを考えるワーク
休憩をはさんで、ここからは森本誠一さん(大阪大学産学共創本部特任研究員)のファシリテーターのもと、新たなワークを行いました。
はじめに、森本さんから塾生たちに1〜48番の番号が書かれた紙が一枚ずつ配られます。その番号の数字の大小は、「趣味の活発さ」の度合いを表し、各人は配られた自分の番号=活発さに見合う趣味を心の中にイメージします。例えば、自分の番号が48番ならば、自分が思う1番「活発な」趣味を、逆にもらった番号が1番だったら1番「地味な」趣味を思い浮かべます。そして、自分の番号に近いと思う人を会場の中から見つけ出して、決まったらペアになって座ります。最後にお互いの番号を言い合って、実際に自分の番号と近い人と座れていれば成功です。もちろん、相手に直接番号を聞くことはダメで、あくまで相手のいう趣味の「活発さ」から相手の番号を判断して、自分の番号に近いかを探って行く必要があります。
実際にゲームが開始してみると、趣味の内容が全く一緒ですぐに決まったペアもありましたが、なかなか相手を見つけることができず、時間ギリギリまで相手が見つからない人もたくさんいました。そして、全体で一人一人の番号を発表して行くと、互いの趣味の内容は似ているのに実際の番号はかなり遠かったり、逆にイメージ通り近い番号の人たちもいました。
「難しい」とか「よくわからなかった」という声も聞かれる中で、ここで森本さんから上手くペアを見つけるためのアドバイスがありました。
このゲームを成功させるポイントは、単に相手の趣味を聞いて番号の大小を判断することではありません。大事なことは、相手が持っている「活発さ」の基準を確かめながら趣味を聞くことにあります。
例えば、同じバドミントンが趣味だったとしても、ある人にとってそれはとても活発な趣味かもしれませんし、ある人にとってはとても地味な趣味かもしれず、互いの番号はなかなか一致しません。人それぞれ「活発さ」の基準は異なることを意識すれば、本当に聞くべきは相手の趣味ではなく、お互いの「活発さ」の基準をすり寄せて行くことになってきます。そのため、「あなたにとってバドミントンは、野球やバスケットボールと比べてどれくらい活発ですか」といったより具体的な問いをすることが、ゲームで勝つ秘訣になります。一見すると同じバドミントンのことを話していても、実際には全く異なる番号同士になってしまうかもしれないのです。
ゲームの解説を聞いて「なるほど」という声が会場から聞こえる中で、改めて2回目のゲームに臨みます。
新しく配られた番号が示すのは、自分の工場で生産している製品の「大きさ」の度合いです。1回目に比べるとかなり素早く相手を見つけて、制限時間を多く残して全員相手を決めることができました。実際の番号を聞くと、やっぱり大きなズレがあった場合もありましたが、今度は相手に聞くコツやすり合わせをよく理解して行えたので、1回目よりも大変楽しく、また学びを意識しながらワークを行うことができました。
※番号の近い人探すワークについて(PDFファイル)/解説:森本誠一
◯NASAゲームで合意形成の難しさと面白さについて考えてみる
場も盛り上がってきた中で、いよいよ最後のワーク、NASAゲームに移ります。
NASAゲームとは、チームで協力して一つの回答を導き出すことを目的としたコンセンサス(合意形成)ゲームです。
参加者は「月に不時着した宇宙飛行士」という設定で、320km先の母船に向かうため、手元にある空気や食料、ボートやロープなどの15アイテムの内、重要だと思うものから順に優先順位をつけていきます。そして、各自の優先順位をグループ内で話し合い、グループの優先順位を最後に出していきます。
この時、グループのメンバー全員が納得し、合意形成しながら順位を決めて行くことが求められます。15個のアイテムの優先順位をみんなで決めることはそう簡単ではありませんが、実際のワークでは、それぞれの想定する宇宙空間の違いをすり合わせたり、メンバー間で知識を共有したりしながら、話し合いは大いに盛り上がりました。
ちなみに、このゲームで話し合われる優先順位には、きちんとした科学的解答があります。しかし、このゲームの本質はそうした正解を導き出すことではなく、お互いの納得と合意を形成して行くところにあります。
例えば、閉鎖された宇宙空間の中で何百日も多数の人と暮らしていくためには、何事にも互いの合意形成をとっていくことが、宇宙で生き延びる上で何よりも重要になっていきます。このことは、これから約一年間つづく創生塾にもいえることです。様々な背景や意見を持つ人たちが集まり、また関わる創生塾という場において、場の空気をギクシャクさせてまで何か正解を見つけて行くことよりも、お互い納得しながらどう向き合い運営して行けるかが、成功の鍵を握っています。実際、グループの話し合いで決まった優先順位は、時に思わず笑ってしまうようなものだったり、現実的にはおかしな点もあったかもしれません。けれども、全ての人たちの納得のいく順位を全員で出せたという経験は、これからより多くの人との出会いと関わりが想定されている創生塾のカリキュラムの中で、非常に重要な意味を持っていたように思います。
※NASAゲームの問題とコンセンサスゲームのねらい(PDFファイル)
◯ふりかえりとまとめ
全てのワークが終了した後は、上村さんと森本さんによるふりかえりを行い、塾生のみささんにもふりかえりシートに本日の感想を記入してもらいました。
今回は第1回目ということで不安と期待の入り混じる中でのスタートとなりましたが、様々なワークを通して活発にお互いの意見を交換し、楽しく議論を深めることができました。特に、NASAゲームなどのワークを通して、互いの意見や価値観を尊重すること、そして何より納得のできる答えを探し出すことの難しさと重要性を実感できました。
相手の意見を尊重したり、相手と協力していくことは、自分にとっての妥協を意味することもあるかもしれません。一般的に「妥協」というとネガティブな意味が伴いがちです。しかし、実際の地域活動の現場では、互いに「妥協」をしながら物事を進めて行く姿勢もまた重要になってくることを最後のまとめとし、第1回講座を終了しました。