第5回(基礎編③) 地域の課題を考える&傾聴プログラム
テーマ:地域の課題を考える&傾聴プログラム
進 行:とよなかESDネットワークの皆さん
日時:2017年7月8日(土)14:00~17:00
場所:とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ セミナー室1
7月8日に実施した第5回講座は、とよなかESDネットワーク(TEN)の皆さんの進行で大きく2つのプログラムを実施しました。
前半は「傾聴」についてのレクチャーとロールプレイング。地域で活動していく上で欠かせない、多様な人々とのコミュニケーションの考え方を実践を交えて体験しました。
後半は、TENオリジナルのワークショップ「ご近所さんゲーム」を行いました。地域で共に暮らしている方の中には様々な立場・境遇の人がいらっしゃること、地域課題にむきあうにあたって必要なことなど学びました。
1.傾聴プログラム ~「傾聴」を理解し実践してみる~
前半は、上村有里さん(TEN)の進行で傾聴プログラムを行いました。
○傾聴とは…
まず上村さんから、傾聴とは何かについてお話がありました。
- 傾聴とは「話し手のお話を、そのまま受け止めながら聴くこと」です。
- 目的としては、
- 話し手をより良く理解すること、
- 話し手とより良い関係を築くこと、
- 話し手に気持ちを楽にしてもらうこと などがあります。
○「アクティブ・リスニング」の体験
ここからは、積極的傾聴(アクティブ・リスニング)の実践です。
まず2人1組のペアになります。ひとつ目のテーマは、相手に第3回講座「音楽創作ワークショップ」の感想を伝えることでした。
つづいて、主訴を引き取らない=相手の話をとってしまわないことに気をつけて、同じテーマで互いの話を聞きました。
○「共感」を伝える聴き方
次に、話しを聴いているときの態度、話したいと思ってもらえる態度について問いかけがあった後、共感を伝えないしゃべり方について体験しました。ペアになった2人は相手の背中にむかってしゃべります。
実践の後、上村さんからは、会話の9割以上が非言語コミュニケーションであるとの研究があることから、表情や姿勢、何気ないしぐさ(うなづきや相づち、声のトーンなど)が重要であることについて解説がありました。
いくつかのパターンで傾聴を試みた後に、効果的な質問をすること、丁寧に受け止めてから質問することによって相手との信頼関係を築くことができるとのお話がありました。そのひとつとして、「はい」「いいえ」で答えるクローズドクエスチョンではなく、「もう少し詳しく教えて下さい」「たとえば、どんな感じですか?」「具体的には?」などのオープンクエスチョンを投げかけると効果的であるとの説明がありました。また、相手は話したくないこと、話せないことは聞かないようにすることも大切であるとの指摘がありました。
最後に「とよなか地域創生塾で実現したい夢」についてペアで話しあい、傾聴体験の締めくくりとしました。
○傾聴をする時に大切にしたいこと
ここまでのワークを踏まえ、上村さん自身の体験から「課題を抱えた人の話を聞くとき」について次のようなお話がありました。
- 「課題を抱えた人の話を聴くとき」は、安心して話せる環境づくりが大切です。
そのためには
- 思わぬ話が出てきたときも、びっくりしないで聴いてください。
- 問題解決を急がないことが大切です。相手の今の思いを聴いて欲しいという気持ちを受けとめてあげてください。
- 重要なのは、気持ちに寄りそうこと。
- しんどい思いを抱えた人は、言葉がすぐに出てこない場合もあります。そのときは、「待つ」ことを忘れないでください。
- リフレクティブリスニング=「○○なんですね」と繰り返すことによって、質問をするよりも効果的な促しができることがあります。
2.ご近所さんゲーム
後半は、森由香さんの進行でTENオリジナルのワークショップ「ご近所さんゲーム」を行いました。
まず5人1組のグループになります。このゲームでは、具体的な事例をもとにその人になりきります。その人がどんな生活をしているか?人権が守られているか?を想像しながら、「基本的人権ビンゴ」のシート(PDFファイル)に書かれている内容について、「できる」「できない」を考えます。
1回目の事例はすべてのグループで同じ内容について話し合いました。
- 国際結婚をして、2 ヶ月前に日本に来た。
- 旅行や留学でこれまでに日本に来た経験はない。
- 配偶者以外の日本人の知り合いはいない。
- 英語と中国語は話せる。
上記の情報をもとに、事例の人の年齢、性別、国籍をはじめ仕事や日本にやってきた経過、現在の状況など、色々な設定が話し合われました。
各グループごとの発表を踏まえて森さんからは、国際結婚をめぐる現状、日本語ができる場合とできない場合の違い、選挙権をめぐる現況など、在日外国人をめぐる状況についてコメントがありました。
2回目はグループメンバーを変更し、違う事例について話し合いました。
事例①
- 20代前半の男性
- ひとりぐらし
- 高校中退
- 非正規雇用
事例②
- 夫が転勤族の専業主婦
- 小学生と中学生の子どもがいる
- 2 年程度で転勤があるためパートでも働きにくい
- PTA のクラス委員をしている
事例③
- 共働きで、パートナーも自分も
- シフト制(夜勤あり)の職業
- 保育園児と中学生の子がいる
- 親は遠方に住んでいて、毎月
- 仕送りをしている
事例④
- 44 歳女性
- 特別支援学校に通う息子の送り迎えをしている
- 夫とは離婚し、養育費をもらっている
事例⑤
- 67 歳
- 週3 回デイサービスを利用しながら、90 歳の親の介護をしている
- 最近自分自身の体調があまりよくない
ご自身の体験や身近な人の経験を交えながら話し合いが行われ、発表ではその様子が報告されました。森さんからはひとつひとつの内容について丁寧なコメントがありました。
最後に、森さんから次のようなまとめがありました。
身近な「ご近所さん」には様々な方がいらっしゃいます。しかし、具体的な状況はすぐには分かりません。「ビンゴ」にあった内容をはじめ、色んなことができない状況にある人もいらっしゃるかもしれません。そこに思いを馳せることができれば、“できない”状況にある人に対するアプローチが変わってくるかもしれません。
一見して分からないことでも、相手の状況や立場にたって考えると多くのことが見えてきます。今日のワークを通して、地域の課題を考える上では、このような物の見方や視点が重要であることを感じていたければと思います。
地域課題を考えることは、社会における公平・公正とは何かを考えることでもあります。そこには具体的な問題に直面している“人”が存在します。目に見える問題は氷山の一角かもしれません。その背景にどれだけ思いを馳せることができるか、「傾聴」というコミュニケーション、「ご近所さんゲーム」というゲーム、それぞれの体験からアプローチした回となりました。